KAWASAKI super4/Z1 キャンディートーンブラウン 火の玉

火の玉カラーはベースカラーで塗り分けをし、キャンディーカラー1色で2色のカラーリングを再現する方法で塗られています。では、当時の生産ライン塗装工程を再現したレポートです。‘1973の火の玉の色違いであるイエローボール、そして翌年‘1974 の赤タイガー、イエロータイガーは全て最初にホワイトを塗ります。今回のホワイトは火の玉内側の色、キャンディーオレンジになります。ホワイトを塗る前に、給油口及びテールカウルの書類入れのところはマスキング。これは必要以上の塗膜厚にならないようにしています。特に給油キャップとロック装着部はできる限り塗膜を薄く仕上げなければならない大事な部分です。

ホワイトを塗装後、カラーリングのマスキングになります。いかに正確にラインの位置を再現できないか?そこで考えたのが立体でのデーター化です。これまで手がけた純正カラーリングラインのをラインテープで再現し極薄FRPを貼り、硬化後削り出し製作しています。タンクの形状にフィッティングする立体の定規です。このカラーリングは奥が深いです。自分が再生時に注意するところのポイント給油口前側の絞りと、赤↑部のアンダーラインがあります。ここは真っ直ぐではなく、ゆる〜い曲線になっています。

火の玉カラーの特徴の一つである給油口前側の部分、フチ周りのラインは同じ幅なのですが間のグレー(後にキャンディーブラウンになります)は中心部に行くに従って細くなっています。写真はそのラインを絞っているところです。マスキングテープを目印に4ヶ所貼ってあるところが幅の変化の始まるポイントです。ここまで約8mmの幅が約5mm狭くなり再び約8mmになります。この幅の変化を自然に馴染むようにトレースします。

ラインの位置が決まったらキャンディーオレンジになるところをマスキングします。2色目はキャンディートーンブラウンのベースカラー、ここで給油口のマスキングを剥がし裏共に全体を塗ります。足付け研ぎは3Mマルチソフト8557で塗り際のラインテープを痛めないように研ぎます。

この黒っぽいグレー、ただのグレーではありません。少し青味があり、透かすと(塗装面に対し斜めに見る)白っぽく見える濃いグレーです。1973年新車時の色はとても濃い目のキャンデーブラウンです。大量生産ならではの個体差もありますが、ここが!おもしろいところ!!退色による色の変化を考慮しながらな何パターンかこのグレーを用意しています。

パールを塗ってベースカラー完了です。火の玉カラーのキャンディーはソリッドでの塗り分けの後キラキラ粒子を塗ります。当初この粒子が何なのか?ずいぶんと試行錯誤を繰り返しました。当初は荒目のメタリックを塗っていたのですがホワイトの部分にメタルの影が見えてしまう・・・ そこで考えたのがパールマイカの塗布!メタリック粒子は立方体のアルミ粉のため影ができるのですが、パールの粒子は透明立方体樹脂の一面のみ着色してあるので影がほとんど出ないという特性があります。パールマイカーは光が当たるところだけキラキラするのはそのためです。

キャンディー塗料は色のついたクリヤーみたいな物で、ベースカラーとキャンディーが重なって色合いができる塗色です。キャンディーカラーは塗り分け際の段差やホコリがついたブツなどに塗料が溜まりこの部分だけキャンディー色が濃くなってしまいます。キャンディー塗布前に塗装面を平滑に仕上げておきます。塗り分け段差部は耐水ペーパー1000番で、全体は3M 8558マルチソフトで研ぎます。火の玉や翌年のタイガーカラーはこの時点で塗り分け段差はほとんどありません。

キャンディー塗装は薄く!薄〜くでの!!重ね塗り。特にベースカラーが明るい色は(今回はホワイトです)ムラになりやすいので、均一な塗りが必要です。火の玉で約5回!1〜2回は特に絞り気味のドライコート。そして徐々にウエットコートで塗布します。グレーがブラウンにホワイトがオレンジに一気に2色が塗りあがるキャンディーカラー。デザインはもちろん、この塗り技法も歴史に残るカラーリングです。